多段ブースターで地デジ電波を増幅してみた


複数ブースターの接続は御法度

「ブースターを通しても電波が弱くてうまく映らないチャンネル、もう一台繋いで更に電波を増幅してやれば映るんじゃね?」
こんなことを考えたことはないだろうか。
しかし、多段ブースターは御法度とされている。理由は、ノイズも一緒に増幅してしまうため効果がないどころか、信号が強くなりすぎてしまうこともあり、かえって状況が悪くなるから。
理屈はわかる。では実際に目に見える形にしてみようではないか。

実験環境
電波を目で見る!!
ブースター×ブースター
見えなかった局が見えるか!?
結論
実験

下の図が測定環境だ。アンテナ直下に既にブースターが入っており、それを4分配している。分配器と下流の 5CFV 同軸ケーブルは遥か昔に施工されたものだ。建屋南面外壁を裸で通っていることもあり、長年の風雨に晒され続け劣化が相当進んでいるはず。今回のような実験をするのにはうってつけだ。

スペクトラムアナライザを用いて、分配器からのケーブル長が異なる ①②③ の3箇所をまず測定し、その後それぞれの箇所で二段目となるブースターを挿入して変化を見ていく。

Booster01

下の図は、ケーブル長が最も短い ① の結果。山ができているところがチャンネルの電波だ。又、チャンネルがない所でもノイズが乗っていて無信号ではないことがわかる。

Booster02

続いて ② の結果。ケーブル長が伸びたことにより ① より電波の山が低くなっている。つまり信号が減衰している。

Booster03

最後に ③ の結果。なんと、ケーブル長が更に伸びたことにより電波の山が殆ど見えないくらいに減衰してしまっている。完全に背景ノイズに埋もれているように見えるが、これでもチューナーを繋ぐとなんとか受信できる。流石に不安定で時折ブロックノイズが入るが…。

Booster04

さて、ここから追加ブースターをスペクトラムアナライザのすぐ手前に挿入して増幅させた信号を測定してみる。ブースターはデジタル放送とアナログ放送が並行していた地デジ完全移行前の時代の、マスプロの 35dB タイプだ。利得調整は手動式で、調整ダイヤルは MAX にしてある。

まずは元々十分強い信号が来ている ① の場所の測定結果。チャンネルの山が大幅に増幅されているが、同時に背景ノイズまでも増幅されてしまっているのが分かる。その代わりに、全くチャンネルの波が見えていなかった中央付近にいくつも低い山が現れた。

Booster05

下の写真はブースターを追加する前後での映りの違いだ。76 あった受信レベルがブースターを追加することで 59 まで低下、C/N 比も 30dB から 24dB に大幅に悪化している。やはりブースターを多重に接続してはいけないのだ。

Booster06

Booster07

では、二重ブーストにより新たに浮かび上がってきたチャンネルの山はどうか。受信を試みたがいずれも受信レベルは一桁台~高くても 20 にすら届かず。どこの中継局の電波かわからないが、どうあっても映るレベルにはあがりそうもない。このように、ごくごく弱い電波を超ブーストしてみたところで期待したような効果は得られないことがわかる。

Booster08

続いて ② の結果。① と同じような結果で特筆すべき点はない。ケーブルが長くなって減衰した分、それを増幅した後の山も低くなっているだけだ。

Booster09

一番遠い ③ では様子が全く違った。なんと、背景ノイズはブースタ追加前とほぼ変わらず、酷い減衰でノイズに埋もれかけていたチャンネルの電波だけがしっかり増幅されて山になっている。チューナーに繋いでみると問題なく映り、ブロックノイズも出ない。ブースターの多段接続はここでは絶大な効果があったのだ。

Booster10

結論

基本的にブースターの多段接続はやってはいけないが、正常に視聴できる強度があった信号が減衰により見られなくなってしまう場合に限ってはブースターを追加することで改善効果がある。ただし、そもそもそこまで酷く減衰してしまう原因の方を根本的に除去することを考えたほうがよいだろう。

残る謎

今回使った追加のブースターは ③ の結果を見る限り、無条件に全体を増幅するのではなく、信号を判断し選択的に増幅するなんらかの機構を備えているようだ。自動利得調整式のブースターではないのだが…。

 


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