EU 離脱か残留か。稀に見る超ビッグイベントで、FX 業者も警告メールを顧客に頻繁に送ったり、レバレッジを低く制限したりと対応に必死だ。これはスプレッドもガバっと開きそうだね…と、FX 業者 6社のスプレッドを記録、比較してみたぜ。
2016/11/01 追記: この記事に登場する FX 業者の内、FXGlobe は日本から撤退することになりました。 |
おことわり
FX 業者の約定能力とスプレッドの狭さ・広さには関係がない。全く別の概念のものだ。いくらスプレッドが狭くて安定していても、約定拒否されたり、約定してもスリップがひどいということもありえるし、逆にスプレッドが広くてもきっちり約定できるということもありえる。
本記事はスプレッドだけに注目したものだ。決して約定力の良否を判定しているわけではない。
スプレッドなど関係なく、約定力が低い業者では このような事例 が発生するし、詐欺業者であれば このような事例 が発生する。十分注意して頂きたい。
対決する FX 業者
記者がリアル口座を持っている以下の 6 社を、勝手に選手としてエントリーしたので紹介しよう。
- ギリシャより AAAFx 選手~!
- 日本代表 FOREX.com 選手~!
- マルタより約定改竄と資金強奪の雄、FXDD 選手~!
- キプロスより話題の新人 FXGlobe 選手~! (アルゴ・ゼロ口座)
- 日本より、損切させてたまるか!!超絶スリップの追証帝王 FXTF (FX トレード・フィナンシャル) 選手~!
- またまたキプロスからは XM.com 選手~! (マイクロ口座)
以上だ。熱い戦いを期待したい。
使用するデータ
期間は、英国国民投票開始時刻の約12時間前、2016年6月23日(木) 午前 2:40 頃から、投票終了後の週末 25日(土) 午前 5:00 頃迄のリアル口座 GBP/USD データだ (時刻は日本時間)
てっぺんから底まで、実に 1,790 pips もの落差がある。スイスフランショックには及ばないかもしれないが、相当な破壊力だ。
VPS 上で FX 6社の MT4 を同時起動する。各 MT4 には予めスプレッドを記録するインディケーターがセットされた GBP/USD 1分足のチャート1枚のみ。このインディケーターで、最小・最大・平均スプレッドとティックカウントを CSV ファイルに記録した。
データの取得に利用した VPS は、記者が 2013 年から三年以上使っていてただの一度もトラブル無しの、イチオシおすすめ欧州方面 VPS である、Warrior VPS だ。OS は利用開始当時主流の Windows Server 2008 R2。
VPS 業者の比較は別記事の、利用者が語る FX 用 VPS 比較 ~ 場所による FX 業者6社との通信速度の違い でやっているので、よければそちらも見てくれ。
さて、念の為にお名前.com の VPS と、自宅 PC からデータの取得も行ったが、Warrior VPS 上で取得したデータに問題はなかったため、それらはこの記事では使用していない。参考資料として記事末尾にアップした zip ファイルには全て含めておくので、気が向いたら色々解析してみて欲しい。この記事とは何か違った面が見えてくるかもしれない。
業者別スプレッド一覧
以下のグラフは、FX 業者各社毎に最大・最小・平均スプレッドを時間軸で示したものだ。時間軸に、MT4 の GBP/USD 30分足の値動きチャートを重ねて対比しやすくしてみた。
グラフ時間軸の中央右寄りで、ガバっとスプレッドが開くタイミングが時間をおいて何度か見られる。一発目の開きからポンドが急落したのかと思いきや、そうではなかった。急落が始まったのは午前 7時頃からで、最初に豪快にスプレッドが開いたのはそれより一時間早い。グラフ左側にある山と同じように、毎日恒例の朝スキャ対策でスプが広がる時間帯だ。二発目からは急落が起きた時間と大体一致する。
グラフを俯瞰すると、目につく点が三つ。
- レートの下落を伴わない、一発目に開いた際のスプレッドが、全体の中で最大の開きになった業者が全体の半分、3社を占める。
- FXGlobe の最大スプレッドが、他社の二倍近くある。
- FXTF はスプレッドが頻繁に上下しない。代わりに、一旦広がったら長い時間広がりっぱなし。
- XM は最低スプレッドを固定したと思われる平坦な時間帯がある。
各社平均スプレッドの比較
六社の「平均」スプレッドを、一枚のグラフにした。
FXGlobe の最大スプレッドがぶっ飛んでいて見づらいので、グラフの縦軸の最大値を 50 に制限したものが以下。このグラフで目に付く点は五つ。
- FXTF と他五社で、スプレッドが開くピーク時間が異なっている。FXTF のみ、国民投票の結果が見えてきた24日お昼過ぎに一気に開いている。その後、18時過ぎまでの間、すっとスプレッド30のままで、顧客に取引させる気が全くない。
- 殆どの時間帯で一貫して FXTF のスプレッドが広い。
- XM も少しビビっているか。EU 離脱が確定的との報道があった24日13時前から他四社は徐々にスプレッドが下がっていくが、XM は15時過ぎまで広めで推移している。最小スプレッドを固定していると思われる時間帯だ。
- AAAFx のスプレッドが狭い。ヨーロッパが主な顧客のギリシャの FX 業者だから GBP/USD のスプが狭いのか。MT4 を利用した場合の取引に手数料がかかることも関係しているかもしれない。
次に、スプレッドが最初に開いた 24日 早朝 5:40~6:20 を拡大してみよう。FXTF は前述の通り、スプレッドが開くピーク時刻が他五社とは異なるので、ここでは無視する。
気づく点は三つ。
- FOREX.com は、大きくスプレッドが開くのが他四社より 6分程遅れている。又、大きく開いている時間は他社の半分ほど、4分で収まっている。
- FXGlobe 以外の四社のスプレッドの開き方はほぼ同じ。
- FXGlobe は豪快に開いたせいか、開きが収まった後も収まりきらずに広めで推移している。
さて、ここまでは大きく変動した点を中心に見てきた。
ではここで、平時…ではないものの、比較的値動きが落ち着いている投票開始前の 23日 10:00~24:00 までを比較してみよう。
気づく点は三つ。
- 最大スプレッドではぶっ飛んでいた FXGlobe だが、平時のスプレッドは他社より狭く、優秀。
- FXTF と AAAFx のみ、投票開始時刻の 23日 15:00 近辺だけ跳ね上がっている。
- FXDD のスプレッドが平均して広い。
ティックカウント比較
ここまでスプレッドを比較してきたわけだが、記者が使わせて頂いた MT4 のスプレッド記録インディケーターは、スプレッドの他にティックカウントも同時に記録している。折角だからこのデータも使おう。
今回は一分足で計測したので、一分間に何回売買レートが更新されたのかというデータになる。値段が全然更新されないのもアレだが、逆にあまりにコロコロされると、注文時に「価格が無効です」などとなり、約定されず撥ねられたり、スリップが大きく出る原因となるだろう。
気づく点は二つ。
- FXTF が飛び抜けている。最大で一分間に 714 回もレートが更新されている
- FXGlobe は全体的に最も落ち着いているが、時折激しくレートを更新する時がある。
如何だったろうか。スプレッドやティックの動き一つとってみても各社ここまで特徴が異なるとは、記者も少々驚いている。とはいえ、冒頭で述べたように、スプレッドの広い狭いは約定力とは無関係であり、真に求められるのは約定力のほうだということを忘れないで欲しい。
参考資料
今回の記事に使用した全データをファイルに一纏めにして置いておく。
記事では、上記 zip ファイルの SpreadCompetition\CSV\GBPUSD\ 内にある Warrior VPS で取得した FX 六社の GBP/USD データのみを使用している。それらを同梱の Excel ファイル SpreadCompetition.xlsx で時差調整し、日本時間(JST:GMT+9)に合わせてグラフ化している。
CSV データの詳細については、SpreadCompetition\CSV\!Readme.txt を参照してくれ。
とてもおもしろいデータです!
ありがとうございます。
「皆気になるところだけれど、中々出そうで出てこないネタ」を
これからも提供していきたいと思います。
本当は、レートとスプレッドがぶっ飛んでいる瞬間の
チャートの動画もおまけに公開するはずだったのですが、
残念ながら録画に失敗してしまいました。く、口惜しや…。